秋が待ち遠しかった
十月になれば 彼女がカナダから帰って来る
そのまま一緒に住んで そして結婚しようと誓ったから…
秋が待ち遠しかった
うなされるような夏の陽射しと引き換えに
収穫を済ませた稲穂の茎の
燃える匂いが町を包み込んでいる
まるで山全体が 喜びで満たされて行くこの時期
私はようやく 別世界へと呼び戻される
それは いつか来た道を引き返す無類の歓びとは
別のなにか…
今 彼女の胸に抱かれてる
つよく 彼女に抱きしめられている
だけど彼女は泣いている
そして私も泣いている
やっと一つになれた歓びと もう一つの気持ちの狭間で
僕らは二人にだけわかる約束を
果たそうとしている
--- 〔 南三陸町 30代前半 男性 〕 ---