Requiem 311

#93. 誰にも読まれることのない詩集

あれから陽射しを避けて 歩いてる

光の中の私は 私の輪郭を持たなくなるから
ずっと陽射しを避けて 歩いてる

光の体は美しく すべてが昇華されて行くといった人の
その言葉がまるで嘘のように
私は重く眩しい光を胸に宿し 永遠の闇を歩いている



この世で最も愛しい人の傍にいて
ふたりが一人一人になって行く日常のなかで

それでも私はこうして詩を紡ぐ



Backlight


誰にも読まれることのない詩集の表紙に
「いつかのふたりへ」 と書いた私


まるで異国の図書館で偶然出会う旅人のように
ふたりはそれぞれ 成長した姿で出会うのだろう




眩しい陽射しを避けて 互いが見える木陰のベンチで

互いに同じ本を 手に取り
すすり泣くように その文字を追いかけるだろう






--- 〔 関東 50代 女性 〕 ---

Michael Whalen - Love's Secret


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