Requiem 311

#70. ホワイトチョコレート

その日のために作っておいた 白いチョコを
なぜか海に持って来てしまった私…

生まれて初めて バレンタインにチョコレートをくれたのが
あなただったから ちょっとだけ頑張った
小さな力作

野球と泳ぎが得意だった彼
数学が好きな彼を 本気で慕った数年間

幼馴染みだったのに二人とも
とんでもなく回り道をして やっと
一枚のチョコレートで心が繫がった…








今朝は目覚ましが鳴らなかった

遅刻しそうになりながら いつもの通学路を走っていたのに
気がついたら海に迷い込んでた

まだ三月なのに 真夏みたいに暑いのはなぜ…?
こんなに暑いと
せっかくのチョコレートが溶けてしまう

ずっしりと重いカバンの中
いつ降ったのか分からないけれど
雨で濡れたみたいに 教科書のページが捲れてる

拭かなきゃ… 早く…

かじかむ両手でカバンを持ち上げると
教科書ではなくて 石ころが宙を転がり始める


いつもと 何かが違ってた
そうか… 私はまだ夢を見てるのかもしれない…

でも チョコレートは握りしめたまま



好き すき スキ… 大好き
だい す き …

まるで想い出みたいに その言葉を繰り返す朝


夢でもいい
今すぐ あなたに会いたい…




--- 〔 陸前高田市 中学生 女子 〕 ---

Mother's Piano - Yuriko Nakamura


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