Requiem 311

#78. 黙視

そこで押し黙るものの姿を ただ見つめるだけの私

長く連れ添い そして時には私の体の一部となることを
歓んで受け入れてくれた彼らの
崩れ落ちる背中をさするだけの一週間と数日…


光が何よりの恐怖だった
それは闇から来るもの

そしてすべてを奪うものだったから…


The farm



痩せ細ってゆく彼らはそれでもなお 乳を腫れ上がらせ
私の役にたとうと懸命だった


何れあの世に行く彼らのために 私にできることは何なのか…

数日間必死で神にそれを問い掛けてはみたものの
答えは一つも降りては来なかった


私に出来ることはただ一つ
それは先に逝き 彼らを受け止めることだけ

言葉にならない彼らの思いや無念と
永遠に共にあろうとする この思いがせめて

揺らがぬうちに… …





--- 〔 飯館村 60代 男性(酪農家) 〕 ---

Steve Roach - The Return


BACK <<< HOME >>> NEXT