Requiem 311

#20. 人魚

その声は亡き父の声だった

何が起きたのか わからない私
大好きだった父の怒声で 一目散に
走り始めた私


そこに行けばきっと守られると 信じて…


そして
船のように動き出した

私も 何もかも






大きな流れに包み込まれて
長袖のコートの内側の冷たい感触が
少しずつ少しずつ 薄れて

気がついたら太陽の下だった


助けてくれてありがとう
  パパ…



ずっと 父を憎み続けた私が
やっとの思いで得た 陽だまりの暖かさ
  家族の安らぎ

   やっとわかり合えたんだよね

        わたしたち…






でも なぜだろう
   父がこんなに近くで 微笑んでるのは…


      まだ 四月なのに 海が

                   こんなにも温かいのは…






--- 〔 行方不明 OL 27歳 2011.3.9 石巻の実家に帰省中に被災 〕 ---

Ennio Morricone: Love Affair


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