Requiem 311

#65. 金婚式

祝福まで あと少しだった

気がついたらここに嫁ぎ 日々の暮らしに追われた50年間

ただ そこに生活があるだけの
厳しい毎日の連続だったけど
ありふれたその暮らしがこんなにも幸せだったことを

深い この海の中で噛みしめている


恋愛も知らずに 古いしきたりに翻弄された
私の70年余の人生が次の幕を開けた朝

少し肌寒い新居には 先に魚が住んでいた








やっと二人になれたはずの
50年目の春は凄まじかった

私たちに用意された無限の時間と
風の来ないベッドには今日も
金色の朝日が挨拶を交わしに来る



結婚してから50年…


永遠の時を得た 二人に捧ぐ
泡の 乾杯…





--- 〔 気仙沼 70代 女性 〕 ---

Vangelis Memories of blue


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