Requiem 311

#67. 経文

流れ着いたその場所は
荒れ狂った水が 火を呼んだ後だった

誰一人 身動きさえ出来ないまま
炎の沈静を待ち続ける 長い時間

人々は目を閉じたまま 行く手を見つめていた…


不思議な光景の中で 一人記憶を遡って行く
過去にも同じようなことがあった

誰も止めることのできない運命の逆風は
ある日突然現れた 厚い積乱雲のように見えるが
そうではなかったことを 実は誰もが悟っていた








私は神に仕える身

その最後の仕事を成し遂げようと
ありとあらゆる祈りの言葉を繰り返す

たかが数十年の命 だけどその全人生を賭けて
信じ抜いたものの出現と変革を 強く願い
固く閉じた唇をこじ開けるように
経を読む


祈りの力で目前の 水や風…
そして火の神々の怒りが鎮まると
心底信じ続けることが

私にできる 全てだった




--- 〔 女川町 70代 僧侶 〕 ---

※Photo by tasogare

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