Requiem 311

#96. 水墨画のような空を見上げ

見渡す限りのモノクローム…

うっすらと色づく秋の空
ほんとうはもっと眩しい青をたたえているはずの 地球の頂上を見上げ
最初に思い出したのは リセットされた赤子の自分…


あんな風に泣ける日が再び訪れるだろうか…


執念の内側に閉じ篭ることもなければ
そこを通りかかる人の姿を捉えることもない

何もない とはこういうことなのだろうか…



水墨画のように


日に日に得て行く悟りの中で
ほんとうは 何も変わっていないことを知った

それはあきらめのようなもの
失ったものは私から見た私だけ

生きて来た 証しとしての私


はじめからそこにないもの という覚悟を据えて
私は その先の時間を送るための支度に入る


色彩を捉えられない今
それでもここにいられる奇跡のような自由を見上げ
ひとり 手をあわせて泣いている





--- 〔 陸前高田市 60代 男性 〕 ---

Jim Chappell - Everything You Said


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