Requiem 311

#85. 風の分身 vol.2

住み慣れた町を一歩一歩
踏みしめながら進んで行く

ここには学校 そしてここにはブランコが…
そして少し離れたところに駄菓子屋さんがあって
その横にはタバコ屋さんが自動販売機を二つ並べてね…


瓦礫の中に埋もれた思い出を
どうかそのままにしておいて… とすがる店主の嘆きが
この空を舞う


沈む花




秋の訪れとともに ここに帰って来る魂がいる

変わり果てた自宅の庭に じっと佇んでいるように見える少女の目が
空の青さと静かに同化する

昔と同じように銀杏取りをしようかと
笊を持ってしゃがみ込む人もいる



彼らは心の世界に生きていた

思い出の中で それ以前の自分を無限にやり直すチャンスを与えられ
その喜びの中で

…前日のまま微笑っている






--- 〔 釜石市 30代前後 〕 ---

George Winston - Thanksgiving


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