Requiem 311

#17. Pavane

あの日 家を失った私たち
あの日 愛するすべてを失った私たち

私はここにいて そして
私の中に もう一人…

もう直ぐ生まれて来るはずだった 小さな命
月子 と名前を決めていた私たち夫婦

その日まで あと少しだった…




そしてこの子を連れて流れ着いた 海の底から
あなたが好きだった 月を見上げてる






胎教にいいと言われ 何度も聴いたあの曲を
私の代わりに
今夜は貴方が聴いている


自宅の庭先にだけ灯る光

貴方の流す涙が 何度も
月に反射する

私たちのために もう泣かないでと
伝えられぬままの 闇の中で

形見の一つも残せなかった私に 今

出来ることは


       何だろう…






--- (31歳 女性 妊婦 / 胎児 女の子) ---

Pavane pour une Infante Defunte (Ravel)


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