Requiem 311

#29. 神の思い

心臓が あなたの思いや都合通りに動かないように
胃袋が あなたの思いとは関係なく空腹になるように


地球も本能に司られて 転り続けているとしたら…



この大きな事故は 私たちが生んだものではなかった

だけど 世の多くの生き物たちがそんな風に言う声を
それでも黙って聞き入れている私たちは
あなた方に見える姿 聴こえる言葉でそれを表す手段を持たない




それはとてもかなしいこと 苦しいこと

だけど それさえ歪められ 数千年の世界でそのまま
言い伝えられて行くことを 私たちはもう知っている








手足 言葉 声を持たない私たちに
今出来ることなど何もない



この夏の向日葵は くすんだ黄色の羽根を広げ
秋の紅葉はきっと ふらふらと迷走するように大地にその身を引き取られ

この冬に降る雪は 見えない狂気に満たされるかもしれない


それもすべて 地球の心が生んで行くものだと きっと誰かが言い始める…



それを止めることさえ 私たちには出来ない


だから ここで見守っていると言う 思いを放つことさえ苦しくて

いっそ
世界のすべてが見えないところに 身を隠したいと願う 一刻一刻







--- 〔 名乗らない神の声 〕 ---

Tir na n'Og - Didier Merah


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