Requiem 311

#54. 15メートルのフリースロー

更地になった校庭に 久しぶりに戻ってみる

鉄骨だけの 剥き出しの校舎
(まるで今の私を見てるみたいな…)

その思い出の部屋を想像しながら
一歩一歩 進んで行った
ここが理科室 ここが美術室

そしてここが音楽室で 隣が私の教室だった



バスケ部の進入部員だった私
憧れの先輩に もう一度会えるだろうか…

いえ それはきっとないだろう

だって彼は今 ほかの校舎に移動して
新しい汗をかいて ボールを追いかけていた


私の姿はきっと 彼の視界には映らない…









愛とは無縁だった私に彼が教えてくれたこと

それは ボールのパスの方法 そして
思いをパスしながら前進して行く方法だった


15メートルのフリースロー

それが出来たらサーティーワンに行って
山のようにアイスクリームを食べようと 約束していた
まだ10代の彼と 私の
未来が消えたあの日から

もう一度やり直せたらいいのに…




私たちはそれぞれのやり方で
来世のゴールを目指して走り出した





--- 〔 行方不明 10代 女性 〕 ---

Ludovico Einaudi Rose


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