Requiem 311

#79. 花火と夜空

海面に映る花火の 焦げた残り香を吸い込んでみる

落ちて行く火の跡がまたひとつ
眠る私の頬をかすって沈んで行った


去年まで 感動の薄い行事のように見上げた 花火と夜空
私は今 そこに心を半分
そして海の底に体を半分ずつ

命を薄めながら住み分けている


花火



初恋が実りそうだった三月
生まれて初めて 想い人に好きだと言われた三月

クラスメイトと先を争う恋ではなくて
心と心を糸紡ぎで引き寄せあう ほんものの恋と呼べる

最初で最後の経験だった…



彼も 私のようにどこか遠くに流されて
時の筏に乗って 旅を始めた頃だろう

あの 汗の匂いのするシャツの背中に
もういちど顔を埋めたい



せめて最後の花火が落ちて行くまでに
彼のいる場所を照らしてはくれないかと
一心不乱に夜空の大輪に 祈りを捧げる…





--- 〔 石巻市 10代後半 女性 〕 ---

Once in a blue Moon 岩代太郎


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