見渡す限りのモノクローム…
うっすらと色づく秋の空
ほんとうはもっと眩しい青をたたえているはずの 地球の頂上を見上げ
最初に思い出したのは リセットされた赤子の自分…
あんな風に泣ける日が再び訪れるだろうか…
執念の内側に閉じ篭ることもなければ
そこを通りかかる人の姿を捉えることもない
何もない とはこういうことなのだろうか…
日に日に得て行く悟りの中で
ほんとうは 何も変わっていないことを知った
それはあきらめのようなもの
失ったものは私から見た私だけ
生きて来た 証しとしての私
はじめからそこにないもの という覚悟を据えて
私は その先の時間を送るための支度に入る
色彩を捉えられない今
それでもここにいられる奇跡のような自由を見上げ
ひとり 手をあわせて泣いている
--- 〔 陸前高田市 60代 男性 〕 ---