何もかもが昔に戻って行く
ほんとうに 何もかもが 何も起きなかったあの頃に
傷を負ったまま強引に 戻って行こうとしている
少しずつ整備されて行く道路の
その脇に眠る人々を忘れるように…
そして起こさぬようにと気遣いながら
そっと元通りになって行く町の風景
その中を風となって走って行く私や 息子たち
愛してやまなかった
か弱い生き物たち…
核家族のような我が家にだって 懐かしい日々があった
安らぎと夢があった
思い出せば辛くなる だから
考えないように…
光の中で眠り続けてる
用事もないのに目が醒める日曜の朝のように
黙って太陽の背中を見つめてる
いってらっしゃい…
もう何処へも行かない家族に そっと呼びかけた
すると
声のない返事の代わりに秋の花々が揺れて
そこに愛の一部がまだ 埋まっていることを
教えてくれる
--- 〔 宮古市 50代前半 女性 〕 ---