Requiem 311

#89. The dark crossing

一日が闇に包まれる時刻 それが私にとっての朝

清清しい空気に包まれ
老いた馬の鬣の如く 荒れた髪を揺らし
砂利道を走り出す


私は一体何歳で どこの誰なのだろうか…

しがらみを解かれた体は永遠の自由を得た代わりに
誰の目にも その姿を捉えられることがなくなった



別世界


別世界のことを知る者を ほかに見つけられるだろうか…

これまで宗教など縁のなかった 小さなこの命に
何かほかの生命が宿ったように この闇を愛し始めた私


無数の足音だけが響く日付の境界線

互いの目を見ることなく
互いが互いの消息を確認しあうように
誰もがこんこんと 風の上を歩いている





--- 〔 石巻市 60代前半 男性 〕 ---

Erik Wollo - Abracada


BACK <<< HOME >>> NEXT