一日が闇に包まれる時刻 それが私にとっての朝
清清しい空気に包まれ
老いた馬の鬣の如く 荒れた髪を揺らし
砂利道を走り出す
私は一体何歳で どこの誰なのだろうか…
しがらみを解かれた体は永遠の自由を得た代わりに
誰の目にも その姿を捉えられることがなくなった
別世界のことを知る者を ほかに見つけられるだろうか…
これまで宗教など縁のなかった 小さなこの命に
何かほかの生命が宿ったように この闇を愛し始めた私
無数の足音だけが響く日付の境界線
互いの目を見ることなく
互いが互いの消息を確認しあうように
誰もがこんこんと 風の上を歩いている
--- 〔 石巻市 60代前半 男性 〕 ---