Requiem 311

#84. 黒い夏の序章


いつかこうなることを恐れてた

たとえ “いつか” 起こることだったとしても
それは “いつか” のことだと思い込もうとしていた


甘い話には裏がある…

そんなことは百も承知だったのに
この場所を永住の地に選んだ 私の愚かさは
大切な家族の将来をものの見事に呑み込んだ


すべては終わったのか…?

いやこれは ただの序章に過ぎない



黒い夏の序章



正気を取り戻したように 海は
今日も 昨日も 穏やかだ

何事もなかったみたいに
その水面に太陽と空を映して
異国の女の如く にっこりと微笑んでいる



空腹を満たした後の女のように

海は
光と風を深々と吸い込んで

重たい脈を打っている






--- 〔 福島県大熊町 40代後半 男性 〕 ---

Jonn Serrie Deep Mystery


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