大したことはないよ… 大丈夫
もう少しこのまましていれば 嵐もおさまるだろう
だからずっとこうしていようよ…
そう言って僕は 彼女の人生を巻き添えにしてしまった
あの時彼女に服を着せて 直ぐに逃げていれば
今頃は…
時間だけが止まった寝室に
今日もジャズが流れてる
彼女が好きだったTootsのハーモニカが
真夜中の二人の定番だった
くったくのないパッセージはまるで 彼女そのもの
僕は毎晩 彼女と一緒にTootsの音楽を抱きしめた
水が飲みたいと言って 生まれたままの姿でペットボトルを一気飲みする
彼女の豪快さが好きで
真似をしてみたけど 柄に合わなかった
尻に敷かれたみたいな僕と そして彼女
だけど僕らは深く愛し合っていた
今も彼女は僕の下で眠ってる
寝息ひとつ立てずに
死んだみたいに眠ってる
--- 〔 岩手県大槌町 30代後半 男性 〕 ---