海面に映る花火の 焦げた残り香を吸い込んでみる
落ちて行く火の跡がまたひとつ
眠る私の頬をかすって沈んで行った
去年まで 感動の薄い行事のように見上げた 花火と夜空
私は今 そこに心を半分
そして海の底に体を半分ずつ
命を薄めながら住み分けている
初恋が実りそうだった三月
生まれて初めて 想い人に好きだと言われた三月
クラスメイトと先を争う恋ではなくて
心と心を糸紡ぎで引き寄せあう ほんものの恋と呼べる
最初で最後の経験だった…
彼も 私のようにどこか遠くに流されて
時の筏に乗って 旅を始めた頃だろう
あの 汗の匂いのするシャツの背中に
もういちど顔を埋めたい
せめて最後の花火が落ちて行くまでに
彼のいる場所を照らしてはくれないかと
一心不乱に夜空の大輪に 祈りを捧げる…
--- 〔 石巻市 10代後半 女性 〕 ---