まるで二日酔いの朝みたいに
体の節々が痛かった
(呑んだ記憶はないんだけどな…)
それにしても一体 どんだけ眠ってたんだろう…
今朝はやけに景色が
いつも以上に煙って 鬱陶しい
確かに 誰かに肩を揺さぶられた気がしたのだけど
そこに人の気配はなかった
それよりなにより
世界中から誰もいなくなったみたいな
この静寂は一体なんだ…
“ おーーーーいっ… ”
いつもみたいにお袋を呼ぼうとしたら
虫みたいに小さな声しか出なかった
目前には巨大な木
こんなに大きな木を この角度で見たのは
生まれて初めてのことだった
俺は虫か?…
まるで空を飛べそうな 不快な軽やかさが
全身を覆っている
寝すぎたせいだろう
顔を洗って飯でも食うか…
“ おーーーーいっ… ” もう一度叫んでみる
散らかった部屋の向こうで
柱にしがみつくみたいに 弟が眠ってる
煙を食べて生きてるみたいな奴だ
その枕元に 一度洗って放置したみたいな
吸いかけの煙草と濡れた灰が 散乱していた…
--- 〔 陸前高田市 20代後半(推定) 男性 〕 ---
※Photo by tasogare