祝福まで あと少しだった
気がついたらここに嫁ぎ 日々の暮らしに追われた50年間
ただ そこに生活があるだけの
厳しい毎日の連続だったけど
ありふれたその暮らしがこんなにも幸せだったことを
深い この海の中で噛みしめている
恋愛も知らずに 古いしきたりに翻弄された
私の70年余の人生が次の幕を開けた朝
少し肌寒い新居には 先に魚が住んでいた
やっと二人になれたはずの
50年目の春は凄まじかった
私たちに用意された無限の時間と
風の来ないベッドには今日も
金色の朝日が挨拶を交わしに来る
結婚してから50年…
永遠の時を得た 二人に捧ぐ
泡の 乾杯…
--- 〔 気仙沼 70代 女性 〕 ---