Requiem 311

#64. 黒い手

私は今 二つの世界の境目に立っている
そしてそこから一歩も動けずにいる


きっと… かもしれない…

私は多くの虚偽の花束で身を覆い隠された挙句に
到底理解の出来ない言葉をまくし立てられて
この世界から追い出されようとしている


そこに住む人々の耳には
とても清らかに響く それが子守り歌だったとしても
私にとっては ある日突然住み家を追い出す

名も知れぬ大家の暴挙としか思えないもの…








世界は一変した

生と そうではない者同士が互いに出会う
ガンジス河の安らぎとは それはあまりに違うもの

人は どちらかの世界を選ぶことが出来たとしても
私にはもう それが出来ない




なぜ…?

それは 私よりもあなたがたの方が ほんとうは知っている

だけどあなた方はそれを
知らなかったことみたいに この時代の廃屋へと

その手で葬り去ろうとしている





--- 〔 陸前高田市付近 20代後半から30代ぐらいの女性 〕 ---

Michael Harrison - In Flight


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