Requiem 311

#62. 疾走する

どうしてだろう…
目が覚めても 夢の中でも私は
ずっと
自転車でこの坂道を走ってる

ここは昨日まで川だった場所

昨日まで春の花が 静かに
羽根をたたんで休んでいた場所


そして昨日まで
友達と学校帰りに遊んでいた場所







無人島に取り残されたみたいに
まわりに人の気配がなくなって
怖くなって 思わず速度を上げてみる

あと少し走ったら 誰かとすれ違うだろうかと…


行きたい場所などないのに
勝手に車輪が動いて行く
まるで水に浮かんだ自転車みたいに
私は流されている…




やがてもう一人の私に呼ばれて
いきなり次の場所に誘われた私

誰かと約束でもしたのだろうか…
だけど 記憶にはない





私は夢から夢を渡り歩いているだけ
だれかが止めてくれるまで

ずっとこうして 心だけが生き続けて行く


誰か 止めて…


だ れ か … 止 め て …






--- 〔 釜石市 8歳ぐらいの女の子 〕 ---

William Ackerman - "Ventana"


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