Requiem 311

#50. 凪

もう 誰を信じていいのかわからなかった
だから 天の声に従った


波は目前に迫っている

だけどここにいる方が ここから出るより安全だから… と
飛び出そうとする僕を引き止めたのは
共に学ぶ大切な友人だった

そのまま一気に 何もかもが終わるなどと
思ってもみなかったこと…






バスが荒波を航海し始める

空が回り 世界のすべてが横転し
そのまま海面が窓の半分まで到達した時
僕は覚悟を決めた


何も聞こえない世界の中に
… それでも心強い仲間と共に向かって行く

この先に何が待っているのだろうか


ふと 母の呼ぶ声を聞いた気がした

これで安心だ 皆助かったんだ… と思い
僕はそのまま眠りについた



鎮まった凪の その後の世界には
二度と戻ることのないまま

思いもよらない遠くの海で
仲間たちと
夢から醒めるのを 僕は待ってる





--- 〔 行方不明 陸前高田市 予備校生男子 〕 ---

Eric Levi - I Believe


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