あの人たちは知らない
黙祷の声が響く海面を
ここで見上げてる人がいることを
復興を願い すべてはなかったことのように
明るく明るく拳を上げる 海の労働者を
ここで見上げる人がいることを…
一番悲しい そして後のない現実…
人の最期の姿から目を背けようとする 彼らの祈りは
ほんとうはどこに向かっているのだろう…
もぎ取られた私の一部
それをなかったことみたいに 海の中へ引き戻した海の労働者の
あの 勇敢な手の感触が懐かしい
父も 漁師だった
その父もたぶん この海のどこかに眠ってる
明暗の淵で息絶えた者の その後の姿を見ようとはしない
あの人たちの祈りは
どこに向かっているのだろう…
私の体の一部はまだ あの網の中にある
--- 〔 行方不明 大船渡付近海底 10代から20代の女性 〕 ---