あと一日早く ここを出ていたら
今頃君と一緒にいられただろう
運命を変えたのは たった一本の
別れた妻からの電話だった
電話が長引いて 激しさを増した口論を止められなくなって
気づいたら 離陸の時間を過ぎていた
この先彼女とも長いのだから
一日延ばせば良いだけだ…
そう思い スーツケースを開けた時
それは起こった
想像などしたこともなかった 己の死
さっきまでの口論で心身疲れ果てていた僕は
自分の身に起きた一大事に立ち向かう気力さえ
もう残ってなかった
だとしても こんなことになるなんて…
その落胆よりも なぜか楽になる道を探してた
あの瞬間の自分
深夜の町
誰かの運転する車に乗り込んだ
このまま君に辿り着くような気がして ならなくて …
--- 〔 行方不明 石巻 30代ぐらいの男性 〕 ---