Requiem 311

#38. 空(から)のベッド

空(から)のベッド
捥がれた布団にはまだ 温もりが残っていた

初日の 君の匂いが染み付いて
この右腕を捉えて 離さない


黙ってどこかへ行く 君ではない

ただいま… と言って 今にも帰って来そうで
寒いのに窓を閉めることが出来ない






君を 求めて ゆらゆらと放浪者みたく
記憶にある道を辿り 何日も彷徨い続けた

だけど 体が凍りついたみたいに冷たくて
ここで止まったっきり
もう… 一歩も動けなくなった

本当は 風が 僕を通過しているだけだった …



愛の真っ最中の出来事だった

たぶん 最初で最後の
抱擁のさなかの出来事だった





--- 〔 行方不明 晩婚夫婦の夫(50代前後) 〕 ---

In The Courtyard of the Reich Chancellery


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