音楽室で ピアノを弾いてた午後
この曲が仕上がったら真っ直ぐに
家に帰る予定だった
今日はママが とれたての卵でプリンを作って
待ってるはずだった
“ おいけのまわりに 野バラが咲いたよ… ぶん ぶん …”
蜂が飛ぶ前に 海に放り出されて
向こうから流されて来た車の中に すっぽりと挟まったまま
私は魚になった
ここはどこだろう…
まるで社会の授業で見たビデオの中の
海底遺跡みたいな風景が拡がっている
朝が来て 太陽が空を一周して
そして沈んで行く
まるで地球の一部になったみたいな私の
頭の中で廻り出す 春の歌…
ぶん ぶん ぶん … は ち が …
--- 〔 行方不明 9歳(推定) 女児 〕 ---